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患者体験から問い直すペイシェント・セントリシティ
2026年10月29日
小野崎耕平氏、岡村直樹、杉田勝好

本記事は、実際の患者さんの体験談を紹介しています。特定の患者さんの体験を紹介したものであり、典型的な患者さんの体験を紹介するものではありません。また、特定の治療法や医薬品の推奨を行うものではありません。気になる症状や医学的な懸念がある場合、また、適切な診断と治療を受けるためには適切な医療機関を受診ください。 

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ある日突然、がんと診断される。

それは、多くの人にとって人生観や価値観が大きく揺さぶられる出来事です。仕事や家族、将来への不安を抱え、「これからどう生きていけばよいのか」と悩む方も少なくありません。

一方で、がんを経験した人々の歩みは一様ではありません。同じ診断名であっても、その人が直面する課題や大切にしたいこと、そして描く未来は一人ひとり異なります。

今回ご紹介する一般社団法人サステナヘルス 代表理事の小野崎 耕平氏は、2025年に食道がんと診断され、手術を受け、2026年に再発しました。現在も治療を続けながら、精力的に全国を飛び回り、講演活動を行い、運動も続けています。 がんと向き合いながらも、自分らしい人生を歩み続ける小野崎氏と、アステラス代表取締役社長CEOの岡村 直樹、代表取締役副社長 人事担当 CPO (Chief People Officer) の杉田 勝好が対談しました。

患者になって見えた、医療の進歩

一般社団法人サステナヘルス代表理事 小野崎耕平氏

小野崎 耕平 氏
一般社団法人サステナヘルス 代表理事
Sustaina Health Association

小野崎氏が患者として感じたことの一つは、医療の進歩でした。

「再発食道がん」と聞くと、静養中心の生活を想像する人が多いかもしれません。しかし、小野崎氏は「病気でも元気」「日常を変えない」をキーワードに、現在も講演活動を行い、出張もこなすなど日常生活は治療開始前とほとんど変わりがありません。さらに、運動も欠かしていません。先日、通院した日も、皇居を一周走ってから病院へ向かったと言います。抗がん剤治療の開始後に、マラソン、水泳、バイク(二輪競技)では、今年になって自己ベストを更新したそうです。

もちろん、がんの再発という現実が軽いものではありません。食道の摘出手術によって食生活は大きく変わり、外食も難しくなりました。それでも、小野崎氏が患者になって強く感じたのは、社会が抱く「がん患者像」と現実との間にあるギャップでした。「がん患者はきっと苦しんでいるはずだ」「体調が悪いに違いない」といういわばスティグマとも言えるようなイメージを向けられて戸惑うことも少なくなかったと、小野崎氏は振り返ります。

「私のように、治療を受けながら仕事や、治療前とあまり変わらない日常生活を続けている患者さんも少なくありません。新たな治療選択肢の登場に加え、副作用を軽減する支持療法の発展などによって、患者さんの生活は大きく変わりつつあります。 私自身、患者になって初めて、医療の進歩を本当の意味で実感しました」

患者本人に聞かなければ分からない

患者中心の医療について語る中で、杉田は、このテーマは医療に限った話ではないと語ります。

ダイバーシティやインクルージョンについて考えるときも同じです。私たちは善意から、「この人にはこうした方がよいのではないか」「きっとこう考えているはずだ」と相手の気持ちを判断してしまうことがあります。しかし、それは本当に本人が望んでいることでしょうか。

杉田は、病気との向き合い方も含め、人の価値観や感じ方には大きな個人差があると語ります。自身や家族の経験を通じて、同じ病気や状況であっても、その受け止め方は一人ひとり異なることを実感しました。

「本人がどう考えているかは分からないので、まずはしっかりと話を聞くことが大事です」

アステラス代表取締役副社長 杉田勝好

杉田 勝好
アステラス代表取締役副社長
人事担当
Chief People Officer (CPO)

対談する小野崎耕平氏、岡村直樹、杉田勝好

その言葉は、患者理解にもそのまま当てはまります。病気を抱えていても、普段どおり接してほしい人もいます。周囲のサポートを必要とする人もいます。前向きに仕事を続けたい人もいれば、一度立ち止まることを選ぶ人もいます。患者像は一つではありません。病気との向き合い方も一つではありません。

小野崎氏もまた、「病気も多様性の一つ」だと語ります。患者というカテゴリーで人を見るのではなく、一人の人間として向き合うことが大切だといいます。「患者さんと接する機会が増えて、病気に対する受け止めや治療への向き合い方は、その人がもつ価値観、家族や雇用・所得などの状況、医療リテラシーによって大きく異なるということを痛感しました」。患者さんが求めるサポートも人それぞれです。

患者さんのことは理解している。その思い込みこそが、患者さんとの距離を生んでしまうのかもしれません。 大切なのは、一人ひとり異なる価値観や人生があることを理解しようとする姿勢であり、個人の価値判断基準や経験・印象で決めつけないことです。

患者さんの立場から見えた社会

長年、製薬業界や医療政策の分野で活動してきた小野崎氏にとって、患者支援や医療アクセスは決して遠いテーマではありませんでした。健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health)の政策実装をテーマに、雇用・所得や生活環境が健康に及ぼす影響について考察してきたので頭では分かっていたつもりでいました。しかし、自らが患者となったことで、病気そのものだけでなく、仕事や収入、家族構成、生活環境といったさまざまな要素が患者体験に大きく影響することを改めて肌身で実感したといいます。

その一例が医療費です。小野崎氏自身、がん治療を受ける中で高額な薬剤を使用しました。日本には高額療養費制度がありますが、実際に患者の立場で向き合うと、自己負担は決して小さくありませんでした。企業の中には健康保険組合が付加給付制度を導入して、さらに軽減していることもあります。しかし、そのような制度を利用できない人にとっては、治療費が生活に大きな影響を与えることもあります。

小野崎氏が投与を受けた薬剤は、販売当初と比べると薬価が大きく引き下げられていました。製薬業界の視点では「薬価が下がった薬」と捉えられるかもしれません。しかし実際に患者として治療を受けてみると、自己負担額は月に20万円近くに達しました。

「制度のことは理解していたつもりでした。でも患者になると、見える景色がまったく違いました。医療費の負担についても覚悟はしていましたが、病院の会計で支払額を見た時に、金額負担の大きさに愕然としました。「私はこれまで『安全地帯』から医療システムを見ていたのではないか。患者視点での想像力が全く欠如していたのではないか。入院中のベッドで、そんなことを考えました」と小野崎氏は振り返ります。

また、患者さんが求める情報も一様ではありません。治療選択肢だけでなく、仕事や生活との両立、同じ病気を経験した人の体験など、患者さんの関心は医療の専門領域や企業の枠を超えて広がっています。小野崎氏は、患者という立場になったことで、製薬企業や医療機関が発信する情報の価値を改めて実感するとともに、患者さんが必要な情報へより横断的にアクセスできる環境も重要ではないかと、強く感じるようになったといいます。患者さんがさまざまさんがさまざまな情報源を活用する中で、専門家による監修や厳格な社内レビュープロセスを経て提供される製薬企業の疾患啓発サイトには、さらに大きな役割を果たせる可能性があると感じたそうです。

対談で話す小野崎耕平氏

一方で、小野崎氏は患者として日本が国家戦略として取り組んできた、がん医療の充実も認識したと語ります。診断後の相談体制、薬剤を含む治療の選択肢の充実、就労支援やアピアランスケア(治療に伴う外見の変化への支援)など、長年の取り組みによって整えられてきた支援の価値を、患者になって初めて実感したといいます。

また、がん治療で入院中、小野崎氏は別のことも考えていました。それは、希少疾患や難病と向き合う患者さんやご家族の存在です。

「患者になって、がん医療が制度面において多くの支援や選択肢に支えられていることを実感しました。一方で、希少疾患や難病の患者さんの中には、診断がつくまでに長い時間を要するケースや、十分な治療選択肢が存在しないケースもあります。まだ必要な支援に十分アクセスできていない人たちもいるのではないかと感じました」

患者になったことで、がん医療にとどまらず、そうした医療や社会の課題にも改めて目を向けるようになったといいます。

「今、自分自身も治療を続けていますが、日常生活を送りながら将来に希望を持てるのは、薬剤をはじめとする医療技術が日々進歩しているからです。創薬への挑戦が続いているという事実そのものが、患者にとって大きな希望になります」

医療の未来は、患者さんがよりよく生きられること

アステラス代表取締役社長CEO 岡村直樹

岡村 直樹
アステラス代表取締役社長
Chief Executive Officer (CEO)

岡村は、小野崎氏の話を聞きながら、医療が大きく変化してきたことを改めて実感したと語ります。

かつて、がんは「治るか、治らないか」という視点で語られることが少なくありませんでした。しかし今日では、医療の進歩によって、多くの患者さんが治療を受けながら日常生活を送り、自分らしい人生を続けられるようになっています。 だからこそ、これからの医療には新しい視点が必要だと岡村は語ります。

病気を治すことはもちろん重要です。しかし同時に、患者さんが自分らしく生きることも同じくらい重要ではないでしょうか」 医療の進歩はまだ道半ばです。依然として治療法が十分に確立されていない疾患や、希少疾患、難治性疾患など、多くのアンメットメディカルニーズが存在しています。岡村は、そうした患者さんやご家族に新たな「価値」を創り届けることが、製薬企業に求められている役割の一つだと語ります。 「今は治療法がない疾患にも、イノベーションの力で新たな治療選択肢を創り、届けること。それこそが、私たち、アステラスが果たすべき役割です」

患者中心の医療、その先へ

対談する小野崎耕平氏、岡村直樹、杉田勝好

ペイシェント・セントリシティは、画一的な考え方ではありません。 個々の患者さんによって状況や大事にしたい価値観は違います。大切なのは、患者さんの声に耳を傾け、学び、ときには自分たちの思い込みを見直しながら前へ進んでいくことです。

今回の対話は、その問いを改めて私たちに投げかけるものでした。そして、その問いに向き合い続けることこそが、患者さん一人ひとりにとって、より良い医療とより良い未来につながると確信します。アステラスはこれからも、患者さんの声に耳を傾け、アンメットメディカルニーズに挑み続けます。そして、革新的な治療選択肢を一日も早く創り、届けることに注力していきます。

本ストーリーは、ある患者さんが歩んできた一つの経験を紹介したものです。病気や治療による影響、人生への思いは人それぞれ異なります。すべての患者さんが同じ経験をされるわけではありません。それぞれの患者さんに、それぞれの人生と大切な願いがあることを、私たちは忘れずにいたいと考えています。

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